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| 酒々井の碑 |
むかしむかし印旛沼の近くの村に貧しい百姓が住んでいました。家が貧乏な上に父も大分年をとって働くこともできませんでした。いいことにはたった一人の息子が大変な親孝行者でして、年取った親に良くつかえて近所でも評判でした。
ところが、この父親はお酒が大好きでした。親思いの息子は家の仕事を一生けんめいやると共に、他人の仕事も手伝っては手間賃をかせぎ、わずかにお酒を買うお金を作り、毎日お酒を買って父親に飲ませ、喜んでお酒を飲む父親の顔を見ることを楽しみにしていました。
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| 製作「影絵劇団かしの樹」 |
ある日のこと、どうしてもお酒を買うお金が手に入りません。このままお酒を持たずに帰ったらどんなに父親はがっかりするだろう。父をがっかりさせることはこの上ない親不孝者だと心をいためていました。どうすることもできなくて心配しながら家の方に向かっていました。ところが、たまたま通りにある井戸のそばを通るとどうしたことでしょう酒の匂いがぷーんと鼻をついてきます。親孝行の息子は大変ふしぎに思うとともにうれしさも一ぱいでした。早速手にくんでなめてみると、これはほんとうにまちがいなしにお酒でした。大喜びで丈筒に入れ家に持ち帰って父親に勧めますと、「こりゃいい酒や、こんなうまい酒は初めてだ。」と大変な喜びようでした。そして、「年をとってこんないい酒を飲ましてもらえるなんてありがたいことだ。」と何度もくりかえしていました。
こうして孝行者の息子は、毎日この井戸からお酒をくんで、父親のもとへもちかえるのでした。そして、それからは、お酒を買うこともなくなり一生けんめい働いて得たお金も少しずつたまって、暮らしもだんだんと良くなっていきました。
このうわさを伝え聞いた人たちは、この井戸の水を飲んでみましたが、お酒ではなく普通の井戸水となんらかわりありませんでした。
そして、このふしぎなできごとは、この若者の親を思う真心が天に通じたのだと、みんながほめたたえました。
この井戸を酒の井戸といい世間にも知られて村の名も酒々井と改めたということです。 |